精子提供とは？

精子提供ボランティア 基礎知識

目次

• 精子提供の定義
• 精子提供の実態
• 外国のケース
• 日本のケース
• 問題点
• 生命倫理上の問題
• 法規制の必要性
• 提供者の減少

精子提供の定義

精子提供とは、男性が有料もしくは無料で自身の精液（精子）を、必要とする第三者の希望者に提供する行為を指します。この提供の大部分は「人工受精」として知られ、専門施設である「精子バンク」を介して行われます。

精子の段階から性格特性を選択できるため、世界中で多くのカップルが精子バンクを利用し、子供を持つことが実現しています。精子バンクについては後ほど詳しく説明します。

この方法は、不妊カップルやLGBTカップルなど、子供を持つ手段が限られているカップルや、独身の女性にとって有益な選択肢として存在しています。

精子提供の実態

外国のケース

海外では、ドナーから精液を収集し、保存した「精子バンク」を利用した精子提供が一般的です。これは主に不妊症のカップル、同性愛カップル、またシングルマザー希望の女性などが利用しています。

精子バンクの利用者数は急増し、アメリカだけで100万人以上の子供が精子バンクを通じて誕生しています。アメリカの精子バンクでは、FDA（アメリカ合衆国保健福祉省）の管理・監視下で、性病検査などの安全性を確保する一定の条件（年齢や健康履歴など）をクリアしたドナーからの精子を使用しています。

価格はドナーの人気に応じて異なり、優れた実績や容姿を持つドナーが上位にランクインしています。各州に独自の規制がある一方で、精子の提供は精子バンク以外でも無償提供を行っている団体や個人によって有料で行われています。

日本のケース

日本には公式の精子バンクは存在せず、生殖技術に関する明確な法律も制定されていません。そのため、精子バンクを利用する場合、高額な利用料を支払って海外の精子バンクを利用することが必要です。

他にも、病院で行われる第三者の精子を使用したAID（非配偶者間人工授精）や個人からの精子提供ボランティアなどの方法が存在します。また、「友情結婚」においても精子提供者を探す選択肢があります。

精子提供に関する規則は学会ごとに異なり、法制化はまだ進んでいない現状です。AIDに関しては「AID（非配偶者間人工授精）について」のセクションをご覧ください。

問題点

生命倫理上の問題

この方法で子供を授かることに対しては批判的な意見も存在し、優生学（デザイナーベイビー）の懸念が挙がっています。親が子供の特性を制御することについての議論は賛否両論です。ただし、書籍『ジーニアス・ファクトリー』によれば、「ノーベル賞科学者の精子を使用しても、同じくノーベル賞科学者の子供が生まれる保証はない」という事実から、完全な制御は難しいと言えます。

その他、肌の色や目の色に基づく選別が行われることから、「人種差別の問題」など、さまざまな倫理的課題が残されています。

法規制の必要性

各国で規制状況は異なり、ニュージーランドやイギリスでは情報公開が義務付けられており、匿名性が一般的です。しかし、日本では学会のガイドラインが公表されているだけで、法制度は整っていません。

現在の日本には公式の精子バンクが存在せず、国内で提供を受ける場合、AIDまたは個人の精子提供ボ

個人によるボランティアのケースでは、産児制限がほとんど存在しない状況です。出生数はドナー次第で変動し、場合によっては近親婚の可能性などが問題となります。また、海外の精子バンクとは異なり、遺伝病や感染症の有無についての保証が不確かであるなど、危険性が存在します。

現在の状況では、精子提供、AID、個人ボランティアのいずれの方法においても、生まれてきた子供が自分の父親を知る「出自を知る権利」と父親の「プライバシーの権利」の間で対立が生じています。

これらの問題を解決するための法整備が今後進展するかどうかは、現時点ではまだ明確ではありません。

提供者の減少

上記の問題点から、精子提供ドナー数の減少が懸念されます。米国では、正式な精子バンクにおける精子提供者の匿名性が維持できなくなり、提供者数が減少しています。匿名性が維持できなくなると、家族関係の複雑化や相続、養育費などの問題が発生します。提供者数の確保と匿名性の維持は密接に関連しています。

日本の場合、先ほど述べた「出自を知る権利」との関わりもあり、AIDに取り組む医療施設が減少し、提供者が集まりにくい状況です。このような状況であるため、第三者からの精子提供を受ける選択肢の一つとして、「精子提供ボランティア」の役割は年々存在感を増しつつあります。